2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗精神病作用を示すヒルスチンとその生体内代謝物の活性発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
20611014
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中澤 孝浩 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (60296019)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 抗精神病作用メカニズム / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
統合失調症における陽性症状は、中脳辺縁系のドパミン(DA)機能の亢進が関与している。本研究では、ヒルスチン投与後の脳内DA及びその代謝物(DOPAC, HVA)をHPLCで定量、代謝回転(DOPAC/DA, HVA/DA)を比較することで、DA神経伝達におけるヒルスチンの効果について検討した。 ヒルスチン単独投与は、正常マウスのDA代謝回転を変化させなかった。しかし、アポモルヒネ投与により強制的にDA代謝回転を抑制させたマウスへのヒルスチンの投与は、代謝回転の脱抑制作用を示した。アポモルヒネはシナプス後膜側のD_2受容体に作用し、DA神経のフィードバック機能を亢進させることで、DA代謝回転を抑制する。昨年度の研究によりヒルスチンには、マイルドなD_2受容体阻害作用あることが分かっている。従って、ヒルスチンはアポモルヒネのD_2受容体へ作用を阻害することで、DA神経のフィードバック機能の亢進を抑制すると考えられた。一方、NMDA受容体の阻害薬であるMK-801は脳内のDA代謝回転比を亢進させる。これはMK-801がシナプス前膜からのDA遊離を促進するからである。ヒルスチンはこのDA遊離亢進作用に対して抑制する傾向を示した。また、ヒルスチンはσ_1アンタゴニストのリムカゾールと同様に、MK-801により誘発されるマウスの自発運動量の低下を回復させることが明らかになった。従って、ヒルスチンはMK-801によるDA遊離作用をσ_1受容体を介して抑制すると考えられた。 以上のように、亢進あるいは抑制されたDA神経伝達はヒルスチンの投与により正常化することが確認できた。この作用にはヒルスチンのD_2受容体関連シグナルの抑制、及びσ_1受容体を介したDA遊離の抑制効果が関与していると推測される。そしてこの様なDA神経伝達の正常化がヒルスチンの抗精神病作用に関係する主たる作用機序であると考えられる。
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Research Products
(2 results)