Research Abstract |
植物ホルモンであるオーキシンは,植物の細胞伸長や細胞分裂を調節する.また,オーキシンは植物個体レベルでは,頂芽優勢,光・重力屈性,胚形成,発根促進などに関与する.オーキシンは主として2種の受容体により,その信号が伝達されていると考えられている.すなわち,核内受容体であるTIR1オーキシン受容体と細胞膜受容体と考えられているABP1受容体である.多様なオーキシンの生理活性は,この2種類の受容体から伝達される信号により制御されると考えられるが,両受容体の機能分担については不明である.そこで,それぞれTIR1受容体に特異的あるいはABP1受容体に特異的な分子プローブが開発できれば,それらを利用してオーキシン受容体の機能分担についての知見が得られると考えた.平成20年度から,TIR1受容体の結晶構造に基づいて分子設計したオーキシン拮抗剤を最適化してきた.特に,PEO-IAAを母核として,そのフェニル基を置換した誘導体に活性の増強が観察された.そのなかでも,メタキシレン基を導入したmXO-IAAは,TIR1受容体からのオーキシンシグナルを非常に強く阻害した.また,TIR1特異的プローブを用いて,下等な陸上植物である蘚類のオーキシン反応を検討し,下等植物でのオーキシンなどの植物ホルモンの解析に有効であることを示した.また,それらTIR1特異的プローブはオーキシンの極性輸送系の解析にも有効であった.また同時に,ABP1を特異的に活性化する分子プローブについて,ABP1の結晶構造に基づいて分子設計を行った.現在,合成したプローブの詳細な生理活性を検討している.
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