Research Abstract |
本年度は,イネやコケ植物における重金属の蓄積機構を明らかにすることを目的として,研究を進めた。その結果,Cdを添加して栽培した二品種のイネ(日本晴,密陽23号)について,茎におけるCd及び植物必須元素の蓄積部位と,各器官(根,茎,葉)に蓄積されたCdの化学形態が明らかになった。 一方,センボンゴケ科イワマセンボンゴケ属のホンモンジゴケ(Scopelophila cataractae)を野外から採取し,10mM PbCl_2水溶液を添加して20分間振とうした試料について放射光マイクロビーム蛍光X線(μ-XRF)イメージング(ビームサイズ3.5μm×5.5μm)を行い,1-2mmという微小なコケの葉におけるPbとCuの元素分布を初めてin vivoで可視化することができた。添加したPbと野外で取り込まれたCuは,いずれも主として細胞壁に蓄積されており,中肋の厚壁細胞(ステライドセル)では特にCuが高濃度に蓄積されていることがわかった。また,0.01M塩酸水溶液と茎葉体を20分間振とうしたところ,大部分のCuは水溶液に抽出されるが,中肋部に蓄積したCuは明瞭に残っていることが示された。また茎葉体のX線吸収微細構造(XAFS)のin vivo測定を蛍光法で行ったところ,ホンモンジゴケ体内のCuは酢酸銅(II)と,Pb(II)はステアリン酸鉛と似た化学形態であり,CuとPbはいずれもカルボキシル基の酸素と結合していることが示された。以上より,PbとCuは細胞壁に含まれる酸性糖由来のカルボキシル基と結合して蓄積されていると考えられる。 以上のように,非破壊で2次元多元素同時分析が可能なμ-XRFイメージングとXAFS解析により,種々の植物における元素の分布と化学形態に関する多くの知見が得られた。
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