2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射光硬X線による結晶化困難蛋白の新しい構造決定法
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20612022
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 裕之 Japan Synchrotron Radiation Research Institute, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60176568)
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Keywords | 量子ビーム / 放射光硬X線 / 結晶化困難タンパク質 / 流動配向法 / X線ホログラフィー |
Research Abstract |
本研究は、硬X線領域の放射光を用い、結晶化困難な蛋白分子またはその複合体の3次元構造を高分解能で決定するための新しい方法論を確立することを目的とする。このため結晶化しない(単分子または溶液状態にある)蛋白試料にX線回折・散乱法を適用する際の問題は位相問題、つまり回折像から構造復元をするのに必要な位相情報が測定時に失われる問題である。この位相問題を解決するのに、主に軟X線領域で試みられているX線ホログラフィー法を適用するのが本研究の趣旨である。ホログラフィー法を適用するには、試料分子から一定の距離に試料分子よりも小さな参照物体を配置する必要がある。21年度は、試料の近傍に参照物体を配置したものが多数存在しているときでも通常のホログラフィー法(試料は1個で、参照物体は1個または数個)と同様に構造復元可能なホログラムが得られるかどうかを検証するため、同一パターンを同一の向きで多数(25個)配置したものをタンタル箔基板上に集束イオンビーム法(FIB)により作成し、全てのパターンを同時に照射できる径のX線ビームで照射し、散乱パターンを記録した。このタンタル箔は厚さが5μmあって微小なパターン(<1μm)を作成するには不適であるので、正方形の領域をFIBで削って薄くしたのち(~1μm)パターンを作成した。しかし、正方形のエッジにX線が当たるとこれが強くX線を散乱し、ホログラムの記録を妨害するという現象が起きた。そこで正方形の範囲内に収まる程度のビーム径(マイクロビーム)を用いたところ、エッジの妨害を受けることなく強度の低いホログラムの部分も記録できるようになった。その他、実際の蛋白分子を試料に用いた際のコントラストを上げられるよう、基板に撒いた蛋白分子を構造を保ったまま凍結乾燥する装置を製作し、試験を行っている。
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