Research Abstract |
本研究は,非線形時系列解析論と複雑ネットワーク論で用いられている解析法を相互に適用することで,従来までは捉えることができなかった複雑現象の数理構造を解明するための理論を構築し,具体的な解析アルゴリズムを提案することが目的である.これにより,非線形時系列解析論の新たな突破口を切り開き,さらには,複雑ネットワーク論に新たな理論展開をもたらす斬新な方法論を展開する.平成21年度は,(1)動的なネットワーク構成による非線形時系列の定量化,(2)古典的多次元尺度法を用いた複雑ネットワークの定量化に重点をおいて研究を遂行した.(1)では,力学系のアトラクタをネットワークへと変換する際に, 時間発展情報を積極的に取り入れた結果,カオスアトラクタからは,Fit-get-rich現象と呼ばれる複雑ネットワーク特有の現象が出現することを明らかにした.(2)では,古典的多次元尺度法を用いることでネットワークを時系列信号へ変換する際に新たなネットワークの表現法を提案した.その際,ネットワークの隣接行列に対する解析により,変換後の時系列が解析的に導くこともできることを示した.具体的には,レギュラーネットワークは巡回行列として表現されることにより,得られる固有値スペクトルの計上が正弦波の重ね合わせとして表現されること,従って,レギュラーネットワークと周期時系列が提案技法を通じて,解析的に結びつけられることを明らかにした.
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