2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20650069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 明郎 Osaka University, 微生物病研究所, 寄附研究部門准教授 (60437308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 健郎 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30209639)
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Keywords | 生物・生体工学 / 糖鎖 / シグナル伝達 / 酸化ストレス / バイオメカニクス |
Research Abstract |
本研究は細胞膜上の糖鎖構造(グライコカリックス)が物理的なせん断刺激を生化学的な反応へと変換する感力センサーであることを明らかにすることから、糖鎖のもつ新たな生理的機能を提示することを目的としている。 この機構を明らかにするため,まず培養血管内皮細胞に層流を負荷し,定常的なせん断力を加える装置を開発した。これまでの報告と同様に、せん断力の負荷により血管内皮細胞は流れに沿った配向を示し,本装置の有効性が確認された。この装置を用いて、細胞表面の糖鎖構造を変化させた時に細胞内でおこる生化学的な変化について現在検討を進め、細胞外力学的刺激と細胞内における生化学的な反応の相関性を明らかにするべく研究を進めている。 細胞における糖鎖構造の改変は、遺伝子的なものや酵素的なものがこれまで用いられてきたが,効果発現までの時間を要し、生細胞に対する適用が難しいなどの問題点を有していた。本年度,細胞培養液中に加えることにより糖タンパク質の糖鎖構造を短時間で容易に改変する化合物を見出した。この化合物を適用することにより,血管内皮細胞における様々な糖タンパク質糖鎖が安定的に変化すること、これまで知られてきた糖鎖合成阻害薬に比較して細胞毒性が低いこと、さらには本化合物の作用に対して強力に拮抗する物質も見出した。 本化合物を血管内皮細胞に適用したところ、可逆的な形態変化が生じることが観察された。このとき、細胞膜上に存在する糖タンパク質糖鎖の構造にも大幅な変化が生じた。化合物を除去または拮抗薬により作用を阻害したところ,細胞形態が正常に戻り、糖鎖修飾も正常なレベルにまで回復した。以上より,細胞膜表面の糖タンパク質糖鎖を介した接着が細胞形態変化に関与することを図らずも明らかにすることとなったことは、本年度の重要な成果と言える。
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