2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20650101
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寒川 恒夫 Waseda University, スポーツ科学学術院, 教授 (70179373)
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Keywords | アジア / 武術 / 観光 |
Research Abstract |
本研究は、アジアに進行する伝統武術の観光化現象を取り上げ、その発生経緯と観光化武術の文化性について明らかにすることを目指すものである。三年度計画の二年度に当たる本年度は、タイ、台湾、中国、それに国内は沖縄を中心に観光化武術の調査を行った。タイにおいてはチュラロンコン大学、台湾においては国立台湾師範大学、中国においては清華大学を訪ね、情報収集を行った。中国はアジアの中でも最も武術観光化が進行している国であるが、それはひとつには、1990年代に中央政府がかつて文革時代に否定したはずの民族文化を観光資源とすべきことを奨励したことと関わっている。武術の世界で他に抜きん出て観光化を進めたのは河南省登封市の少林寺に伝わる拳法で、既に以前より映画等によって国内外に知られ、その結果、寺の入場料収入と武術学校収入は年間50億円に達していたが、これを加速させるかのように昨年末に市が香港資本と提携して少林寺を株式会社化させる構想を発表した。この構想には賛否両論が寄せられ、観光化武術のありかたについて議論が展開している。ありかたについての議論としては、中国湖南省湘西土家族苗族自治州勾良村のミャオ族伝統武術も問題となる。政府の民族観光政策を受けて始まったミャオ族武術の掘り起こしの過程で創造された武術がミャオ族伝統武術として今日勾良村の観光椎牛祭の目玉イベントとして上演されるが、そこには明らかに後代の、しかも漢族武術の強い影響が見て取れるのである。伝統を冠することで民族文化性を付与しようとする村と地方行政の姿勢は、武術観光化の文化問題を考える格好の対象となる。国内では流鏑馬が注目される。それまで祭礼儀式としてあったものが、競技化する現象が見られ、競技化がより多くの観客を動員する中から行政当局が観光化の関心を示し始めたのである。更に調査が待たれるところである。
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