Research Abstract |
本研究の目的は,有酸素運動(運動療法)やエネルギー摂取制限(食事療法)による3ヵ月間の生活習慣介入が心外膜脂肪に及ぼす影響について検討することである.当該年度は,まず,心外膜脂肪厚が心肺機能の評価指標である全身持久性体力に及ぼす影響について検討した.その結果,心外膜脂肪組織は他の脂肪組織より全身持久性体力に強く関与する可能性が示唆された.次に,有酸素トレーニングが心外膜脂肪厚に及ぼす影響について検討した.3ヵ月間の有酸素運動トレーニングをおこなった結果,心外膜脂肪厚は有意に減少した(-8.61%,P<0.001).有酸素運動は,腹腔内内臓脂肪だけでなく心外膜脂肪も減少させることが明らかとなった.最後に,低カロリー食が心外膜脂肪厚に及ぼす影響について検討した.その結果,3ヵ月間の食事制限は,心外膜脂肪厚と内臓脂肪および局所脂肪を有意に減少させることが明らかとなった(P<0.001). 本研究では,代謝異常との関連が多数報告されている腹部内臓脂肪ではなく,肥満者の心部内臓脂肪に着目し,中年肥満男性を対象に,心エコー法により評価した心外膜脂肪と心肺機能(全身持久性体力)との関係および生活習慣介入(運動療法,食事療法)による心外膜脂肪の変化を検討したものである.これまでの研究の結果,心外膜脂肪が多い肥満者の全身持久性体力が低いこと,また,生活習慣介入に伴う減量により,心外膜脂肪の減少率は腹腔内脂肪の減少率ほど大きくないものの,介入方法に関わらず減量により心外膜脂肪も有意に減少することが明らかとなった.これらの結果は,心血管系疾患の危険因子である心外膜脂肪の減少に,運動実践や食事制限が有効であることを示すものである.第2年度は,肥満関連遺伝子の遺伝子多型が,生活習慣介入による心外膜脂肪の減少にどのような影響を及ぼすかなどを含めて検討する予定である.
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