Research Abstract |
ベテラン教師と初任教師の比較パラダイムの下での,パラ言語,ソーシャルプレゼンスの出現のあり方およびそれらの機能の比較検討とその準備を行った。 前年度,千葉県館山市北条小学校にいて,初任教師(経験1~2年)とベテラン教師(経験20年以上)の教授行動の比較を行った。この研究は,教育工学の初期の頃に典型的にみられた研究パラダイムである。初任者の教育を,熟練教育者との行動比較の中で,わかりやすく,焦点化するための技法であった。義々はこの枠組みに,新しくパラ言語,ソーシャルプレゼンスの観点をいれることを思いついた。従来の研究は主に,教師の発話分析の手法を用いてなされたものであった。 パラ言語の研究については,我々の研究室では,すでに,教育実践の現場から,パラ言語を抽出することに成功している(有賀・岸・菊池・野嶋,2008)。当該の研究では,パラ言語情報のカテゴリーを特定する同定実験の手法を用いて,学校現場の授業場面から,教師の自発音声を収録し,その音声分析を試みることによって,パラ言語の抽出に成功している。「納得」,「気づかせ」,「反語」,「確認」の4カテゴリーがそれである。 このなかでも特に児童の主体性に考慮した「気づかせ」,「反語」が韻律的にも特徴的なカテゴリーとして指摘されている。相手の主体性を慮り,児童の意見を直接的に否定しない教授行動がパラ言語として抽出できたことは,ライブ映像がなぜ,学習者との対話を含まないスタジオ映像などと比較して学習者あるいは,視聴者に好まれるのかを追求する良いヒントになる。また,この準備段階の資料として,初任教師と熟練教師との教授行動の比較実験データからも近接した結果が得られる予定である。 本年度は,上記のような研究の枠組みのもとソーシャルプレゼンスの質問尺度の開発と,パラ言語抽出とライブ映像の効果を結びつける理論構築に多くの時間を割いた。
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