2008 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪蓄積阻害作用を示す環状ペプチド(-)-テルナチンの生物有機化学的研究
Project/Area Number |
20651058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上村 大輔 Keio University, 理工学部, 教授 (00022731)
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Keywords | テルナチン / 3T3-L1前駆脂肪細胞 / 脂肪蓄積阻害活性 / 構造活性相関 / 細胞内標的分子 / 細胞内局在化 |
Research Abstract |
これまでにマウス3T3-L1前駆脂肪細胞に対して脂肪蓄積阻害活性を有する環状ヘプタペプチド、(-)-テルナチンの簡便かつ有用な合成方法の確立により種々の誘導体調製が可能となっていた。これを活用し、構造活性相関の研究を進めた結果、allo-イソロイシン部分とロイシン部分が活性発現に重要である一方、3個存在するする-メチルアラニン部分が活性発現に対する寄与が小さいことを見出した。活性発現に重要と考えられた分子内に存在する3個の水素結合の存在と活性発現の関係をNMRスペクトルおよびCDスペクトルにて詳細に検討した所、部分的に存在するtype II β-turn構造を確認した。そこで各水素結合を欠損した同族体3種を合成して、構造活性相関を検討し、いずれの水素結合を欠いても生物活性が低下することを確認した。 最も活性発現に影響のない部分、すなわち前述の配N-メチルアラニンの内の1カ所にビオチン、FITCを導入したケミカルプローブを合成した。ビオチン誘導体と3T3-L1細胞の破砕液とのアフィニティ実験から(-)-テルナチンの細胞内標的分子の候補を見いだすことに成功した。また、蛍光性のFITC誘導体を使っての3T3-L1細胞内局在化を観測した結果、核以外の部分に特異的に蓄積していることを見いだした。これらの成果は今後の細胞内標的分子の特定に大きく貢献するものと期待される。 テルナチン誘導体合成に利用した合成方法を、毒性を有する別の天然環状ヘプタペプチド、リゾニンA及びその誘導体の合成に応用した。これらの誘導体の構造活性相関に関する詳細な比較をすることにより、活性発現に重要なアミノ酸部分、或は毒性に関与するアミノ酸部分など、今後のより優れた性質を持つ誘導体設計に役立つ情報が得られた。
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