2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20652001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
水本 正晴 Kitami Institute of Technology, 工学部, 准教授 (70451458)
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Keywords | ゲティアー問題 / 誤信念課題 / 心の理論 / 実験哲学 / 信念変化の理論 / 発達心理学 |
Research Abstract |
本研究は、実験哲学の文脈で認識論、特に知識の分析と関わる調査を行うことで、知識の理論に新たな経験的データを供給することを目標としているが、平成20年度は、市内の4つの小学校から3学年(1年、3年、6年)、計14クラスの児童に対し調査を行い、それを分析している。 具体的には、ゲティアー事例について「知らない」と判断した小学1年生の割合は誤信念課題をパスした子供では大学生に匹敵するくらい高かったが、小学3年、6年と学年が上がるにつれ「知っている」と判断する子供の割合はむしろ増えることが分かった。これは小学1年生の判断と大人の判断が、実は異なる理由に基づくことを示している。実際、他者のある信念が撤回されて元の信念状態に戻ることを認識する能力は、1年生から3年生、6年生へと段階的に向上していることが判断した。 このことの意義については今後の注意深い議論が必要であるが、一つの仮説は、1年生の「知らない」という判断は、その内容が自分が直接見たものでなく、他人から間接的に情報として得たものであった、という事実に起因するとうものであろう。だがそれは、1年生が間接的に得られた知識全般を否定しがちである、ということではない。対照実験として、報告者が視覚的に報告内容を見た場合を見ると、その報告者から情報を得た人物は「知らない」と児童は判断するのである。この事実の意義と1年生児童の「知識の理論」の詳細は、本年度の研究によって明らかにしていきたい。
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