2009 Fiscal Year Annual Research Report
権威主義的政治システムの民主化と法変動の相互関係――台湾の場合
Project/Area Number |
20653001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 賢 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (80226505)
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Keywords | 民主化 / 違憲審査 / 大法官会議 / 台湾法 / 権威主義体制 / 選挙制度 / 中華民国憲法 / 賢人支配 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは台湾における民主化と法変動の相互関係の多面的に追求しているが、今年度は抽象的に法令の憲法適合性判断を行う権限をもつ司法院大法官会議の台湾移転後の判断と民主化の関係に焦点をあてて研究を進めた結果、以下のような知見を得た。(1)国民党政権の台湾移転後、60年代までは大法官会議が積極的に法令を違憲とする例は限定的であり、概ね現体制の維持に資する判断を行っていた。(2)70年代後半以降は中華民国憲法に依拠して下位の法令を違憲とし、その効力を失わせ、立法府に法改正を迫る例がしだいに増えていく。大法官会議の違憲解釈を受けて、立法院は法改正を余儀なくされ、結果的に民主化を推進する契機となった。これは大陸で選出されて以来、改選されることなくいわゆる万年国会となっていた立法院の台湾における全面改選を導いた。すなわち、選挙制度の民主化は大法官会議の憲法解釈が直接的なスイッチとなって起動したのである。(3)そうした憲法解釈が可能となったのは、国民党統治の下でも大法官に学者出身の者が多数登用されていたという背景がある。これには中国に伝統的な知識人に対する尊敬の念、賢人支配の意識が背景としてあると考えられ、読書人による統治という伝統を台湾も引き継いでいることが顕著に観察された。(4)1947年に南京で制定された中華民国憲法が、近代的な民主国家を創出する種を備えていたことが、台湾において民主化が引き起こされた元となっていることも明らかとなった。逆に戦後、中華民国の法体制を全面廃棄した中華人民共和国においては、民主化が進展しないという皮肉な結果ももたらしている。
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Research Products
(1 results)