2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20653021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
涌田 幸宏 Nagoya University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (30255020)
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Keywords | 伝統産業 / 古民家再生 / 制度理論 / 組織フィールド / イノベーション / 制度化 |
Research Abstract |
本研究は、主として社会学的制度理論の視点から「伝統からの革新」、とりわけ伝統的木造建築産業を事例として取り上げ、古民家再生のイノベーションをめぐる組織フィールドがどのように形成され、革新が普及・制度化していったのかについて考察する。平成20年度は、この目的を達成するために、ロジャースのイノベーション普及学および制度の変化・普及おける制度理論のレビューを行うとともに、古民家再生の先駆者である建築家降幡廣信氏をはじめ、古民家再生に意欲的に取り組んでいる建築家やNPO民家再生リサイクル協会にインタビューを行った。その結果、組織フィールドの構造化においてNPOの成立が大きな役割を果たしていることが見いだせたが、革新の普及に大きく貢献したのは、古民家再生を行ってきたアクターではなく、むしろ古材リサイクル、町づくり、地域活性化といった、これまで関連をもたなかったアクターであり、彼らが組織フィールドに参入してきたことが影響していたことが判明した。これまで、制度理論では、埋め込まれた行為者による革新説明するために、制度の企業家というアクターを想定してきたが、革新の普及の段階では、革新の正当性を制度内部のアクターによる理論化だけではなく、外部のアクターによる理論化も行われているという新たな知見を発見した。これを意味ネットワークの焦点化という観点から「相乗りとしての制度化」という概念で表現した。この知見を昨年の日本情報経営学会全国大会で発表したが、今年度、同学会誌においても論文を発表する予定である。
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