2008 Fiscal Year Annual Research Report
電子伝達機能をもつ鉄-硫黄タンパク質の電子状態-物性物理からのアプローチ-
Project/Area Number |
20654032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授 (70237056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 秀敏 東京理科大学, 理学部, 教授 (10004441)
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Keywords | 生体分子 / 鉄・硫黄タンパク質 / 厳密対角化法 |
Research Abstract |
本年度はFe_2S_2クラスターに注目してその電子状態を検討した。特に、環境がクラスターの量子力学的な電子状態にどのような効果を及ぼすのか解明することを目標とした。凝縮系物理の観点からは,環境の効果をいかに簡潔な形でモデル化できるかが重要である。その観点から特に重要だと思われるのが,二核の還元型鉄-硫黄クラスター[Fe_2S_2]^<1+>である。システインがクラスターに付随しているときは基底状態はFe^<3+>とFe^<2+>が区別できる局在状態にある。そのときの全スピンはS=1/2となる。しかし、システインの一つをセリンに置換すると非局在な混合原子価状態Fe^<2.5+>Fe^<2.5+>が形成され全スピンがS=9/2となる。クラスターを取り囲む環境変化がクラスターのあるパラメータを変化させて,波動関数の混成変化を生じさせているものと思われる。そこで、Fe_2S_2クラスターに付随する配位子Sの3p軌道のポテンシャルを変化させることで、基底状態の全スピンがどのように変化するか調べた。手法は、ランチョス法に基づく大規模厳密対角化計算である。そのパラメータは、結晶場計算から得られたFe3d軌道のエネルギー準位や、Harisonのパラメータ化による混成相互作用、さらにFe上のクーロン相互作用である。S=1/2の基底状態を得るには、二つの鉄イオンの構造による非対称性が重要であることがわかった。また、S=9/2を得るには、その非対称性が消失するほうが都合のよいことが計算から示された。これらの結果は、最近行われた、構造解析の結果ともコンシステントである。
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