2009 Fiscal Year Annual Research Report
電子伝達機能をもつ鉄-硫黄タンパク質の電子状態-物性物理からのアプローチ-
Project/Area Number |
20654032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授 (70237056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 秀敏 東京理科大学, 理学部, 教授 (10004441)
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Keywords | 生体分子 / 鉄・硫黄タンパク質 / 厳密対角化法 |
Research Abstract |
昨年度に引き続きFe_2S_2クラスターに注目してその電子状態と磁性を検討した。特に、環境がクラスターの量子力学的な電子状態と磁性にどのような効果を及ぼすのか解明することを目標とした。凝縮系物理の観点からは,環境の効果をいかに簡潔な形でモデル化できるかが重要である。二核の還元型鉄-硫黄クラスター[Fe2S2]^1+では、システインがクラスターに付随しているときはFe^3+とFe^2+が区別できる局在状態にあり全スピンはS=1/2となる。しかし、システインの一部をセリンに置換すると非局在な混合原子価状態Fe^2.5+Fe^2.5+が形成され全スピンがS=9/2となる。その効果の起源を明らかにするため、まずランチョス法に基づく大規模厳密対角化計算により鉄と硫黄の電荷移動エネルギーを変化させることで基底状態の電子状態と磁性を明らかにした。超交換相互作用と二重交換相互作用の競合により電荷移動エネルギーの大きなところでS=9/2が安定になることが分かった。電荷移動エネルギーを減少させるとS=1/2が基底状態となる。その境界で二つの鉄に非対称性を加えるとS=1/2が安定となる。実験で現れている上記現象を理解するためには、二つの可能性がある。一つは、S=9/2の基底状態が元々安定で、システインだけの時、構造上の非対称性によってS=1/2が安定となっており、セリンを加えることでその非対称性が消失するとする考え方である。もう一方は、元々S=1/2が安定で、セリン置換により電荷移動エネルギーが増加するという考え方である。その際、セリン置換による分極率減少が必要となる。現在、そのどちらが現実に起こっているのか検討中である。
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Research Products
(1 results)