2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20654033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 康浩 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60222163)
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Keywords | マイクロチップ / 熱容量 / 超伝導 / 磁性 / 強相関 |
Research Abstract |
本研究は、分子性化合物の極微結晶を用いた低温での電子系の相転移の高感度な検出を可能とするため、MEMSカロリメターを極低温領域で実用化することを目指した開発研究である。平成22年度は、まず、前年度までに作成した増幅回路、フィルター回路などの信号検出系、温度制御系に改善をはかりえ、ノイズの低減化を進めた。これによって、熱容量測定チップTCG3880を用いた低温熱解析装置をほぼ完成させることができた。さらにソフトウェアーを整備し液体ヘリウム温度から室温まで連続的に測定ができる自動制御プログラムを作成した。 この装置を用いて、まず、有機電荷移動塩であるκ-(BETS)_2FeBr_4の1μgの単結晶を用いた熱容量測定をおこなった。この物質は、2.3Kで磁気相転移、1.1Kで超伝導転移を示す磁性超伝導体である。マイクロチップを用いることで、この磁気転移に伴う熱容量の変化を検出することに成功した。さらにこの装置を研究室現有の横磁場型のスプリット磁石と組み合わせて用いることで、二次元結晶の面平行方向に磁場を印加し、面内磁場の大きさと方向依存性を検出した。ここから、スピンが面内のa軸方向に容易軸をもって配列していることが判明した。次いで、低温でスピン液体の性質を示すことが知られているκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の熱容量測定を進めた。この物質は、6K付近に非常にブロードな熱異常を示すことが知られており、その磁場依存性について興味が持たれている。チップ熱量計を用いて、同様に1μg以下の微小結晶によりこのブロードな熱異常を磁場依存性まで含めて確認することが出来た。本研究によって、このようなマイクロチップ熱量計を用いることで分子性化合物のような大型結晶を作成するのが困難な物質についても熱力学的な相転を検出することが可能であることが示された。
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Research Products
(5 results)