Research Abstract |
堆積物中モリブデンとタングステンの分析法の開発 乾燥堆積物試料約100mgを用いて,モリブデンとタングステンを回収率95%以上,変動係数5%未満,有効数字3桁で分析できる方法を開発した.開発した方法は以下の要素から成る.(1)マイクロウェーブ分解装置による湿式灰化,(2)閉鎖系蒸発乾固装置による蒸発乾固と再溶解,(3)8-ヒドロキシキノリン固定化樹脂(TSK-8HQ)カラムを用いる分離濃縮,(4)ICP質量分析装置による定量.(1)の分解条件を最適化し,過塩素酸を不用とした.この結果,過塩素酸イオンおよびその分解生成物が(2)の再溶解溶液から除かれ,それを希釈するだけで(4)によるタングステンの定量が可能となった.希釈法と固相抽出法による測定結果は,よく一致した.また,(2)の再溶解試料およびその希釈試料を用いて,主要成分・微量成分の定量が可能であることを確かめた. 北海道岩内沖堆積物コア試料の分析 1998年11月,北海道岩内郡岩内町沖(43° 22' 36'' N, 140° 04' 10'' E,水深900m)で採取されたIWANAI No.3堆積物コア試料の分析を行った.コアの全長は7.3m,最下部の年代は46,530 y BPである.このコアの各層から約200個の試料を採取し,分析に供した.上記で開発した方法により,MoとWを定量した.また,再溶解試料を用いて主要成分・微量成分(Al, Ca, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Ni, Cu, Ba, Uなど)を定量した.また,採取試料の一部を用いて,C, N, Sを定量した.これらのデータを解析し,この堆積物は,4回強還元的環境を経験したことを明らかにした.堆積物中モリブデン/タングステン比が古海洋酸化還元プロキシとして有用であることを立証した.来年度は以上の結果を論文にまとめ,発表する.
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