2008 Fiscal Year Annual Research Report
希ガスマトリックス効果を考慮した凝縮系振動スペクトルシミュレーションの理論開発
Project/Area Number |
20655001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武次 徹也 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (90280932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野呂 武司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50125340)
中山 哲 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10422007)
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Keywords | 希ガスマトリックス / 希ガス化合物 / 振動スペクトル / ab initio計算 / 凝縮系 / 分子動力学計算 / 調和振動数 / 基本振動数 |
Research Abstract |
本研究では、量子化学計算手法を凝縮系のダイナミクスに実装し、不安定分子種の分光定数を測定する手段として長らく利用されてきた「希ガスマトリックス単離法」を理論的にシミュレートする方法を開発することを目的としている。本年度は、まず遷移金属モノカルボニルNiCOおよび希ガス元素が結合したAr-NiCO錯体に対し、MOLPROを用いてCCSD(T)計算を実施し、基底関数重合せ誤差を補正したポテンシャル曲面に基づいて構造決定・振動解析を行った。その結果、Ar-NiCOの結合エネルギーは7.7kcal/molと見積もられ、通常のvan der Waals力よりもはるかに強い力でArが結合することが示された。また、Ni-C-O変角振動数についてArが結合することにより約10%値が増大し、Arマトリックス中で測定されたNiCOの変角振動数と非常に良い一致を示すことが明らかとなった。さらにNiCOの周りに31個のAr原子を配置してDFT計算を行い、構造と振動数の変化の様子を調べた。構造最適化では、一つのAr原子のみがNiに強く結合し、それ以外のAr原子はほとんど動かない様子が示された。引き続き、Arマトリックス中のNiCOの振動スペクトルをシミュレートするために、Ar-NiCOに対するポテンシャル関数を作成した。NiCを固定し、CO距離及びArの位置を動かしてDFT法で約4万点のエネルギー計算を行い、3次元のポテンシャル曲面を作成した。Ar-Arにはレナードジョーンズポテンシャルを適用して分子動力学計算を行い、DVR法によりCO伸縮振動数を見積もったところ、実験値を再現しなかった。Ab initio計算は、ArがNiの電子状態に影響を及ぼすことを示しているので、NiCを固定して考えた点に問題がある。次年度は、NiCの自由度もあらわに考慮したシミュレーションを行い、実験値を参照して結果の妥当性を議論する計画である。
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