2008 Fiscal Year Annual Research Report
マルチカラー同時発振レーザーの開発とコヒーレント分子科学への展開
Project/Area Number |
20655005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
大島 康裕 Institute for Molecular Science, 光分子科学研究領域, 教授 (60213708)
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Keywords | 原子・分子物理 / 物理化学 / 分子分光学 / 強レーザー場 / フェムト秒化学 |
Research Abstract |
本研究は、独立に波長の掃引が可能な複数のパルス光を発振するマルチカラー同時発振レーザーの開発し、このレーザーシステムを活用することにより、分子の量子固有状態分布や位相関係までも精密に制御した分子内反応ダイナミックス研究へ展開することを目指すものである。マルチカラーレーザーとしては、研究室で開発を進めてきた単一モードcw半導体レーザー光によってインジェクションシードしたパラメトリック発振・増幅(OPA)を利用し、シード光を複数とすることによりマルチカラー化を実現することを計画している。本年度は、現有のOPAに様々な改良を加えて単一モード発振の安定性を大幅に向上することに成功した。周波数幅は160MHzであり、ほぼフーリエ限界の分解能が達成されている。また、出力も1パルスあたり8mJに達し、非線形コヒーレント過程を誘起するに十分なレバルとなった。このシステムでは、BBOを非線形媒質としてNd^+:YAGレーザーの3倍波により励起を行ない、シグナル光として〜520nm、アイドラー光として〜1.05μmを発振する。本年度の後半から、シグナルおよびアイドラー光ともに1.05μm付近を発振する新規システムの開発に着手した。光発生効率やビームポインティングなどについて検討を加え、BiBO結晶を用いた2倍波励起を採用した。非シード条件ながら10%以上の変換効率が達成できており、非線形コヒーレント分光に十分利用できる。このシステム単独で、シグナルとアイドラーの2色の出力光を用いて誘導ラマン過程が実現できる。特に、シード光を適切に位相変調することにより非共鳴条件でも状態分布を完全に移動できると期待される。実際に、光Bloch方程式の数値解析により適切な変調条件を求め、ほぼ100%の効率を確認した。
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