2008 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー照射による熱的非平衡系の構築と位置選択的反応制御への応用
Project/Area Number |
20655020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神戸 宣明 Osaka University, 大学院・工学研究科, 教授 (60144432)
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Keywords | 自由電子レーザー / アレン / 分子内付加反応 / 有機カルコゲン化合物 / 熱的非平衡系 / シクロデキストリン / 被覆長鎖分子 |
Research Abstract |
本研究は、自由電子レーザーと用いて、特定の分子あるいは官能基を熱的に励起し、溶液内に熱的な非平衡系を構築することにより、化学反応を制御する可能性の検証を行うことを目的としている。本年度は研究の初年度に当たり、本研究に利用する基質の検討と設計、および合成法の開発を行った。 反応基質となる化合物として、大きく二種類の化合物群を候補にあげて合成法を検討した。一つは、重原子による差異を明らかにするため、硫黄、セレン、テルル等の酸素属原子を含む化合物の合成法の開発を行った。その結果、硫黄やセレンを含むカルバメートやエステル類の炭素-炭素三重結合への分子内付加反応を開発した。本反応は、アレン結合への分子内付加反応にも応用できることを明らかにすると共に、付加反応の位置選択制を詳細に検討した。更に、合成法の汎用性を高めるため検討を加え、ビニルセレニドの炭素-炭素三重結合への分子内付加反応も開発した。これらの知見をもとに、有機カルコゲン化合物のアレン分子への分子間付加反応を開発し、その位置選択制を明らかにした。もう一方の化合物群として、包接化合物が熱的非平衡系の構築に有利な構造を有していると考え、その合成方の検討を行った。本研究で利用するためには、有機溶媒に可溶でかつ被覆率の高い化合物の合成が不可欠であることから、ホスト分子は天然のシクロデキストリンを完全メチル化して用い、軸分子とし構造的に剛直なアリール基とアセチレンユニットを繰り返し単位とする化合物を合成した。この合成法の特徴は、ホストとゲストになる小分子を予め化学結合で連結し、これをモノマーとして用いて重合させることであり、本手法により有機溶媒に可溶な分子量3万前後の被覆長鎖分子の合成に成功した。
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