Research Abstract |
糖鎖合成などを目的に,armed糖供与体を用いた立体選択的なグリコシル化反応が求められている。しかし,既知反応は,選択性においてまだ完全ではない。本研究では,極めて高い(ウルトラ高)立体選択性を示し,かつ反応性の高い(armed)糖供与体の設計を目的とする。選択性の発現,並びに,armed糖とする事を同時に満たす要因として,架橋構造による糖の環立体配座制御を用いる点が特色である。 2008年度は,以下の研究業績を得た。まず,o-キシリレン基架橋を有する糖供与体を用いたβ選択的グリコシル化反応の最適化と選択性発現の理由解明を行い,本反応を確立した。次いで,原料糖合成の合理化,位置選択的な脱保護が可能な架橋体の合成経路も確立した。上記の内容は,現在特許の申請中である。 選択性発現の理由解明については,その立体配座が重要な要因であることと共に,反応中の触媒サイクルに二種類の化学種が関わっていることを明らかにした。また,反応溶媒,活性化剤,脱離基の種類を変化させて,幅広い基質に対応できるよう最適化できた。 原料糖合成の合理化については,これまでピラノース環を一旦開く段階の長い経路で供給していた点を抜本的に改善し,これを市販のアセトブロモグルコースから容易に供給できるオルトエステル体を用いた合成ルートに変更できた。これに伴い,2,4位水酸基にベンジル基以外の保護基を導入した糖供与体を合成できるようになった。 今後反応機構をベースにして多様な原料を設計できるため,ウルトラ高立体選択性発現を目的とした,より幅広い反応調査が可能となった。
|