2008 Fiscal Year Annual Research Report
導電性高分子ポリジメチルアミノピロールの合成と特異物性・機能解明
Project/Area Number |
20655028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 寛 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (70156090)
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Keywords | 導電性高分子 / 磁性 / エレクトロクロミズム / レドックス / 薄膜 |
Research Abstract |
本研究では導電性高分子でありながら、平坦バンド強磁性体の候補であり、特異な物性を示すポリ[1-(N,N-ジメチルアミノ)ピロール]を研究対象とし、その基礎物性の解明を行うとともに、エレクトロクロミック材料および磁気材料としての応用性を評価、探究した。これまでにこの新物質の基本構造となるオリゴマー、2、4、8、10、12量体および可溶性ポリマーの単離に成功した。そして、これらの電荷中性物質のX線結晶構造解析、電気化学測定、UV-VIS NIR光吸収測定を行うとともに、化学酸化によって得られたカオチン種のUV-VIS NIR光吸収測定やEPR測定等を行った。その結果、下記のような、ポリピロールのような良く知られたπ共役導電性高分子およびそのオリゴマー体では見られない興味ある現象が観測されてきた。 オリゴ[1-(N,N-ジメチルアミノ)ピロール]のn量体はn=4,6,8では2電子酸化状態まで化学的に安定に生成し、n=10,12では4電子酸化状態間で安定に生成する。 電荷中性状態では、π-π〜*遷移による吸収は紫外領域に現れ、nの増加による長波長(低エネルギー)シフトは殆ど見られないが、酸化状態では、600-1200nm(λ_<max>=ca.1000nm)に非常に強い吸収(ε_<max>=ca. 8×10^4M^<-1>cm^<-1>)が現れる。したがって、酸化により無色から濃青色へ変化する。 4,6,8量体の2電子酸化体はEPR不活性(すなわち反磁性)だが、10,12量体の4電子酸化体の固定試料は5KにおいてEPR活性で、g=2にナローイングを起こしたシグナルを与える。ただしg=4付近等の高スピン状態を示すシグナルは現れない。スピン密度は-オリゴマ-分子あたり3程度ある。すなわち複数のスピンが「常磁性」的に存在する。溶媒ガラス中の測定では、スピン密度は個体粉末状態より小さく、溶媒に依存する。この場合もEPRスペクトルにはg=2のシグナルのみしか現れない。 可溶性ポリマーも化学的に酸化できる。
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