Research Abstract |
日本語で書かれた建築基準をコンピュータプログラムに変換し,CADで設計された建物が,これらの建築基準を満たしているかどうかを判定する手法について研究したものである。建築基準法の単体規定(建築物に関する技術的な基準を定めたもの)について,一般化した条文の形式(「条件Aを満たすSは条件Cを満たさなければならない。ただし,条件Eに該当する場合は,この限りでない。」という形式)を定め,この形式に即して記述された技術基準文書をVisual BasicやJavaのようなプログラミング言語で書かれた判定関数に変換するコンバータを作成した。この技術は,建物の設計環境をより知的に,よりインタラクティブに拡張する技術基盤となりうる。それぞれの条件A,C,Eを満たすことを判定する関数は,CADアプリケーションによって異なるため,具体的な事例として,Bentley社のCADソフトMicroStation上でいくつかの判定関数の可能性を検証した。この中で,建物の軒高の算定,最高高さが建築基準法上の指標となる高さのどの区分に属するかの判定,耐火建築物かどうかの判定について検証した。最近のCADソフトでは,建築部材に属性を与えることができるようになったが,この属性を使って前述の算定・判定を行うことができることを確認した。本研究では,建築基準法の単体規定を一般化することによって,応用範囲を拡大し,建築基準法に準じた形式で記述さえすれば,判定プログラムに変換するこひとができることを示した。一方で,法令文と異なり,標準仕様書や企業内で使用されている技術基準の多くは論理的でないことが多く,判定プログラムへの変換には課題も多い。研究で得られた知見は,日本建築学会の技術報告集や年次大会等の学術講演を通して発表する。
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