Research Abstract |
地球環境保全のためCO_2ガス排出量の削減に向け多くの取り組みがなされる中,自動車駆動電源としての水素エネルギーが注目されている.実用的には水素をより多く吸蔵する合金が必要であり,Mg系合金に研究が集中している.Mg系合金では,La-Ni系合金とハイブリッドな水素吸蔵合金を作製すると不均化反応が抑制でき可逆的水素吸蔵放出量を維持できたり,遷移金属との積層体で一連の不均化反応を利用して可逆的水素吸蔵放出量や水素化反応速度を増加させ,水素の放出温度を本質的に低下させる試みがなされていたりと,不均化反応が重要な役割を果たすことが明らかになりつつある.本研究では,不均化反応を促進あるいは抑制する因子を実験的,理論的に探求し,不均化反応を積極的に工学的に応用する方策を見出すことを目的とした.特に,純Mgの水素放出温度に及ぼす応力効果,RE-Ni-Mg(RE:希土類金属)系におけるハイブリッド化合物の不均化反応抑制機構を調べた.純Mgはその水素化物の解離温度が350度と高いが,解離時に応力が加わると解離温度が低くなるとの仮説のものと,熱力学的に解離温度-応力の関係を導き,これを実証した.実証では,計算に基づいて4GPaの応力下,270度で水素化物の解離を行わせ,X線回折により純Mgの体積分率が大きく増加することを見出した.RE-Ni-Mg系ハイブリッド化合物では,REとしてCeを添加するほど不均化反応が促進され,Niの代わりにCoを添加するほど不均化反応が抑制されることを明らかにした.不均化反応の促進,抑制は水素化物の生成エンタルピーの変化により熱力学的に説明でき,ハイブリッド化合物の電池としての応用上,重要な知見が得られた.
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