Research Abstract |
Snはbct構造からダイヤモンド構造に変態すると結晶構造の変化に伴い26%程度体積膨張するため破壊することが知られている.Snの同素変態は223〜243Kで発生するため,熱および衝撃を加えずにはんだ接合部を破壊し,実装基板を理想的に解体し,基板,部品およびはんだ合金を回収可能であると考えられる.Snの同素変態は,変態開始まで極めて長い時間が必要であることがわかっており,接合部の分離には適していないように思われる.しかし,Snの同素変態に関する研究例は少なく,その詳細は今日まで解明されていない.本研究では,SnバルクおよびSn合金を用いて,基礎的なSnの同素変態挙動の精査とSnを用いた接合体の同素変態による分離の可能性を検討し,以下のことが明らかとなった.表面に形成する酸化膜はSnの同素変態を著しく抑制する.したがって,酸化膜を除去し,有機溶媒中など再酸化を防ぐ環境において同素変態は極めて短時間で発生する.特に,イソプロパノール中での冷却が効果的である結果が得られた.また,α-Sn接触によりα-Sn核生成を促進し,同素変態に要する潜伏期間を短縮でき,さらに,Snに微量のGeを添加することで,潜伏期間を極めて短縮させることができることが明らかとなった.これは,ダイヤモンド構造の物質が同素変態の核となることを示している,これらの知見を元に,接合体の分離を試したところ,同素変態によりBGAおよびSnで接合したチップ抵抗接合体の分離が可能であることがわかったが,接合体においては,Cu電極からのCu拡散や,接合部の拘束による体積膨張抑制が同素変態を遅延させることが明らかとなった.
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