2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20657005
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
西田 隆義 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60208189)
|
Keywords | 繁殖干渉 / 花粉 / 外来種 / 在来種 / 生物多様性 / 侵入可能性 / 種間競争 / 生物群集 |
Research Abstract |
特定の外来種が、なぜ近縁在来種を急速に駆逐するのかはほとんど分かっていない。本研究では、外来種による花粉干渉がその主因であるという仮説の検証を行った。これまでの研究で、西日本の在来タンポポであるカンサイタンポポはセイヨウタンポポの花粉干渉を受けることを明らかにした。しかし、同じく在来のトウカイタンポポはむしろセイヨウタンポポに優占する。 本年度の研究の結果、トウカイタンポポは花粉干渉を受けないことが明らかとなった。その直接の理由を探るために、さらに虫頭での花粉管の伸長について共同研究者の協力を得て調べた。その結果、セイヨウタンポポの花粉がめしべに付着すると、カンサイタンポポでは花粉管が伸長し胚に達するが、トウカイタンポポでは伸長が途中で止まることが観察された。さらに、カンサイタンポポに花粉干渉しない在来のシロバナタンポポでも同様に花粉管の伸長が止まることが分かった。ただし、花粉親の正確な同定は技術上の限界のためできなかった。 これに加えて、資源競争と花粉干渉の効果を組み込んだシミレーションモデルを構築し、種間競争の結果の予測を行った。その結果、現実に観察される急速な駆逐は、花粉干渉なしにはほとんど生じないことが分かった。 日本列島に分布する他のタンポポ(シナノタンポポ、エゾタンポポなど)についても野外調査を行い、セイヨウタンポポから花粉干渉を受けることが示唆された。しかし、その一方で、カンサイタンポポの中にはセイヨウタンポポを圧倒する個体群もあり、花粉干渉に対する感受性には大きな変異がある可能性も出てきた。 以上の結果は、外来在来を問わず、タンポポにおける種間競争の結果が、花粉干渉によって簡単に説明できる可能性を強く示唆する。
|