2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20657006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 伸一 Kyoto University, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 竜二 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (30244528)
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Keywords | 水月湖 / 嫌気環境 / 微生物 / 溶存酸素 / 硫化水素 / 細菌 / 大型原生生物 / 繊毛虫 |
Research Abstract |
水月湖の表層水(水深7,8mまで)とそれ以深の水(底層水)について、各種微生物の現存量と組成を鉛直的に測定し、各生物の現存量と組成の鉛直分布を、物理化学測定項目の鉛直分布から考察した。また、測定を行った各水深において、それぞれにおける各生物の現存量と組成から、各水深の微生物ループの特性を考察した。平成20年度は、合計6回、福井県・水月湖の東経135°52.959'、北緯35°35.329'地点において、調査を行った。調査の最初に、透明度の測定および水質プロファイラーによる水温、塩分濃度、濁度、溶存酸素濃度の鉛直測定を行い、微生物学的測定を行うために適当な水深の特定を行った。その結果、すべての調査において、水深1, 5, 6, 7, 10mの層が適当であり、これら各層より微生物学的測定用サンプルを得た。細菌の現存量は、酸素が豊富な表層と、硫化水素濃度が高い水深7mで高い傾向が見られた。酸素濃度が急激に低下し、硫化水素濃度が顕著に増加する水深6m以深では、大型の糸状細菌の現存量が大きく増加した。細菌摂食者として重要な鞭毛虫についても同様の傾向が認められたが、細菌ほどには明確なパターンは得られなかった。より大型の原生生物である繊毛虫は、表層で検出される種属(Strobilidium, Strombidium, Cyclidium, Urotrichaの各属)と、嫌気層でのみ検出される種属(Spirostomum, Tiarina, Metopus, Colpidium, Euplotesの各属)がいたが、完全嫌気となる水深10m層では繊毛虫はほとんど検出されなかった。以上の結果より、最も原始地球環境的な微生物ループは水深10mにおいて発達し、より浅い水深になるほど新しい(好気的)微生物ループの構造・機能を有した生態系が発達していると示唆された。
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