2008 Fiscal Year Annual Research Report
森林遷移原動力としての光合成耐陰性の分子生物学的および生理学的解析
Project/Area Number |
20658036
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津山 孝人 Kyushu University, 農学研究院, 助教 (10380552)
|
Keywords | 樹木 / 光合成 / 電子伝達 |
Research Abstract |
森林遷移の特徴である陽樹林から陰樹林への移行は、森林を構成する樹木の光合成能力の変化、すなわち、耐陰性の強化による。本研究では光合成の耐陰性に着目し、弱光下での光合成の制御についての基礎的知見を得ることを目的とした。クロロフィル蛍光および葉の吸光度(A830)の同時測定により、2つの光化学系の効率を様々な条件下で解析した。その結果、弱光下では光合成電子伝達の効率は高く、特に光合成の定常状態では、光化学系IIの効率は最大値に近いことが分かった。一方、同様に弱光下の定常状態で、光化学系I(系I)反応中心クロロフィル(P700)は還元型で存在した。この状態で葉に飽和光パルスを照射しP700の酸化還元状態の変化を調べたところ、P700の最大酸化を検出することは出来なかった。P700は部分的に(約25%)は還元型で止まることが分かった。同様の現象は、極端な強光下でも観察された。この結果は、強光下と同様に、弱光下でも系I電子伝達が制限されていることを示唆する。弱光下の系I電子伝達の制限は、強光下での系Iの制限と同様に、電子受容体の不足が原因であることを示唆する。 従来、弱光下では系Iの電子伝達の効率はほぼ100%であると考えられてきた。事実、単離した系Iではそれを指示する結果が得られている。本研究の結果は、系Iは電子伝達鎖に組み込まれた状態では、単離された状態とは異なり、他の電子伝達反応の制限の下で系Iは機能することを示唆する。弱光下での真の律速因子を明らかにすることで、陰樹における光合成の耐陰性についての基礎的知見が得られるものと期待される。
|
Research Products
(2 results)