2010 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性好熱菌による難分解性プラスチックの分解及び有用物質生産システムの構築
Project/Area Number |
20658050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
左子 芳彦 京都大学, 農学研究科, 教授 (60153970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 天士 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80305490)
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Keywords | 脱ハロゲン化酵素 / ポリ塩化ビニル / 好塩性Bacillus / モノブロモ酢酸 |
Research Abstract |
本研究は、ポリ塩化ビニル(PVC)など難分解ハロゲン化合物を、海洋性細菌を用いて分解し有用物質を生産するシステムの基盤構築を目的としている。そのため昨年度までに、モノブロモ酢酸(MBA)の微生物に対する増殖阻害作用を利用した集積・分離培養法を確立し、鹿児島県若尊カルデラの海底コア試料から極めて高い脱ハロゲン活性を発現するBacillus属137c株を分離することに成功した。今年度は、本菌株より脱ハロゲン化酵素(HAD)の遺伝子クローニングを試みた。また、得られた137c株HAD候補遺伝子ならびに既報のProteobacteria門のHAD遺伝子のアミノ酸配列に基づき最尤法により系統樹を作成するとともに、海洋メタゲノム(GOS : Global Ocean Sampling)におけるBacillus属細菌HAD様遺伝子の分布を調査した。データベースよりBacillus属細菌ゲノム情報よりHAD様遺伝子配列を検索した結果、いずれもGroup II HAD様配列であり計23配列得られた。これらは酵素性状が報告されているProteobacteria門のGroup II HAD配列とは異なる4つのグループ(1~4)に大別された。137c株に対してHAD様遺伝子を探索したところグループ3特異プライマーによるPCRによって増幅産物が得られた。本遺伝子ホモログは、海洋メタゲノムから得られなかったが、ごく最近砂漠塩湖より分離された好塩性B.coahuilensisのゲノム上に見出された。16S rDNAに基づく系統樹においても、137c株はB.coahuilensisを含む中度好塩性Bacillus属細菌と近縁であり高塩分環境におけるHADの重要性が示唆された。また、本HADはgroup Iに属するHADと同様にL体とD体両方のハロゲン化合物に対して活性を示す。しかしながら、Group Iの酵素反応に重要なアミノ酸配列YGNPHYは認められなかった。また本HADは構成的に発現することから、誘導的に発現する既報のHADと転写制御においても大きく異なる。これまで、Bacillus属細菌由来のHADに関する知見は皆無であり、ハロゲン化合物の分解のための新たな酵素資源としての利用が期待される。
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Research Products
(2 results)