2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物の環境応答を利用した先端的防除技術の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20658059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
渋谷 俊夫 Osaka Prefecture University, 生命環境科学研究科, 講師 (50316014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (70305655)
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Keywords | 生物環境調節 / 昆虫生態学 |
Research Abstract |
植物葉への昆虫の寄生密度は,植物の形態的特性やストレス状態によって異なることから,物理環境調節によって植物の形態的・生理的特性を変化させることで,植物への寄生密度を制御できる可能性がある.本研究では,キュウリ育苗時の湿度条件が,育苗後におけるタバココナジラミの寄生密度に及ぼす影響を調べた.キュウリ実生を低湿度および高湿度条件のグロースチャンバで育成した.低湿度条件は気温約30℃で相対湿度約10%,高湿度条件は気温約30℃で相対湿度約90%とした.それぞれの湿度条件で育成したキュウリをひと組ずつ透明の昆虫飼育箱に入れ,タバココナジラミを飼育箱あたり約150〜200個体放飼した.コナジラミを放飼してから24時間後にキュウリ葉に寄生したコナジラミ個体数を調べた.コナジラミの寄生は,両試験区ともほとんどが葉の背軸面にみられた.総寄生個体数は,低湿度で育苗したキュウリにおいて高湿度で育苗したものよりも有意に小さかった.キュウリの相対クロロフィル含量および乾物率は,低湿度で育苗することで高湿度よりも大きくなり,比葉面積は小さくなった.これは,低湿度で育苗することで,高湿度よりも葉色が濃く,含水率が低くなり,さらに葉が厚く展開したことを示唆する.光学顕微鏡で葉背軸面の表面構造を観察したところ,低湿度で育苗したキュウリは高湿度よりも細脈付近の毛じが発達している傾向がみられた.コナジラミの寄生行動に差が見られたのはこれらの形態的な特徴の違いに起因すると考えられた.これらのことから,物理環境制御によって植物の形態的特性を変化させることで,コナジラミの寄生個対数を制御できる可能性が示された.
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