2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20659030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井垣 達吏 Kobe University, 医学研究科, 特命助教 (00467648)
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Keywords | ショウジョウバエ / 細胞競合 / 遺伝学 / 細胞間コミュニケーション / 細胞・組織 / 癌 |
Research Abstract |
本研究は、細胞間コミュニケーションを介した上皮の恒常性維持機に重要な役割を果たす「細胞競合」の分子機構の解明を目的とするものである。細胞競合とは、組織中で隣り合う2つの細胞間に引き起こされる増殖速度の競合であり、この競合の“勝者"は“敗者"を細胞死によって排除してその場を占有する。これは、多細胞生物における器官発生過程で生じる「揺らぎ」を調節する機構であり、また、癌の発生にも深く関わっている現象であると考えられている。しかしながら、その分子機構はこれまでほとんど明らかにされていない。その理由として、組織中で引き起こされる細胞競合を高感度で検出できるモデル系が存在しなかったことが挙げられる。研究代表者らはこれまでに、ショウジョウバエ成虫原基の上皮組織において、apico-basal極性を失った細胞が細胞競合により組織から排除されることを明らかにした。このとき細胞競合システムを破綻させると、これら極性崩壊細胞は過剰に増殖して組織に腫瘍を形成し、個体を死に至らしめる。本研究は、このきわめて高い検出感度をもつ新規細胞競合モデル系を利用し、細胞競合の分子機構を遺伝学的に明らかにするものである。本目的を達成するため、平成20年度は、極性崩壊細胞が細胞競合により上皮から排除される際の、周囲の正常細胞の役割を詳細に解析した。その結果、極性崩壊細胞に隣接する正常細胞はc-Jun N-terminal kinase(JNK)経路を異所的に活性化していることを見出した。このJNK活性化の役割を明らかにするため、これら正常細胞のみでJNK経路を遺伝的に抑制した結果、このJNK活性化は細胞競合の実行に促進的に働いていることが明らかとなった。そこで平成21年度は、JNK経路の下流イベントを明らかにすることで、細胞競合における周囲の正常細胞の役割とその分子機構を明らかにしていく。
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Research Products
(10 results)