2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20659030
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井垣 達吏 Kobe University, 医学研究科, 特命准教授 (00467648)
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Keywords | 細胞競合 / 遺伝学 / 細胞間コミュニケーション / ショウジョウバエ / JNK |
Research Abstract |
細胞競合とは、組織中で隣り合う2つの細胞間に引き起こされる増殖速度の競合であり、この競合の"勝者"は"敗者"を細胞死によって排除してその場を占有する。これは、多細胞生物の器官発生過程で生じる「揺らぎ」を調節する機構であり、また、癌の発生にも深く関わっていると考えられている。本研究では、ショウジョウバエ遺伝的モザイク法を駆使して細胞競合に関わる遺伝子群を同定し、その生理機能と細胞競合における役割を明らかにすることを目的とする。具体的には、ショウジョウバエ上皮において細胞競合を介して組織から排除されるapico-basal極性遺伝子変異細胞に着目し、これに隣接する正常細胞群に様々な遺伝的操作を加え、これにより細胞競合が異常となる表現型を指標にして細胞競合制御遺伝子を探索する。本研究におけるこれまでの解析により、敗者細胞に隣接する勝者細胞においてJNK(c-Jun N-terminal kinase)経路の活性化が引き起こされることが分かった。平成21年度は、この勝者細胞におけるJNK活性化の役割を遺伝学的に詳細に解析した。その結果、敗者細胞に隣接する勝者細胞のJNK活性化は、細胞競合の遂行に促進的に働いていることが明らかとなった。研究代表者はこれまでに、敗者細胞はJNK経路の活性化により細胞死に至ることを示してきた。すなわち、以上の結果から、上皮に極性遺伝子変異細胞が出現すると、組織は変異細胞(敗者細胞)およびれに隣接する正常細胞(勝者細胞)においてそれぞれJNK経路を活性化し、これらがそれぞれの細胞群で異なったアウトプットを導きだすことにより細胞競合を効率的に遂行していると考えられた。
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