2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20659067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 The University of Tokyo, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Keywords | 赤痢菌 / マイクロRNA / 自然免疫 / 遺伝子発現調節 |
Research Abstract |
細胞内に存在する20-25塩基ほどの1本鎖RNAであるmicroRNAは広範な生命現象に関与していることが知られている。しかしながら、細菌感染におけるその役割にはほとんど報告がない。その一因として、microRNAを扱うために、従来の細菌学の枠組みを超えた実験的なアプローチが必要となることが考えられる。本研究の目的は、赤痢菌を始めとするさまざまな病原細菌の感染過程において宿主microRNAがどのような役割を果たしているかを、専門分野に捕らわれない最新の実験・解析技術を駆使して解明することである。最初に、細菌が感染した宿主細胞でmicroRNAが実際に発現変化するかを調べるために、種々の病原細菌を細胞に感染させ、約600種のmicroRNAを対象としたマイクロアレイ解析を行った。その結果、感染細胞では非感染細胞と比較し、数多くmicroRNAの発現が変化することを確認できた。またこの発現変化を、microRNA特異的なリアルタイムRT-PCR法を用いて定量的に確認することにも成功した。microRNAは自身の配列に相補的なmRNAを標的とし、その遺伝子産物の発現量を調節する働きを有している。細菌の感染により宿主microRNAの発現パターンが変化したことから、感染における宿主遺伝子の発現応答もこの小さなRNAによって制御されていることが予想された。そこで、microRNAの成熟に必須であるDicer蛋白をRNA干渉法によりノックダウンした細胞に赤痢菌を感染させたところ、通常感染で惹起されるIL-8などサイトカインの発現レベルが顕著に減少することを確認できた。本年度の成果により、病原細菌感染におけるmicroRNAの機能が明らかになりつつあり、今後の解析によって細菌学・免疫学だけでなく細胞生物学など他分野の研究にも新たな知見を与えることが期待できる。
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