2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20659067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 The University of Tokyo, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Keywords | miRNA / 細菌感染 / 細胞増殖 / HIF-1α / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
細菌の感染現象とmiRNA(microRNA)の関連性については、その重要性は示唆されてきたものの、これまでほとんど報告がなかった。本研究では、いまだ猛威を奮っている細菌感染症と、進化的に保存された小さなRNAに焦点を当て、その関連性を明らかにしようと試みた。前年度に同定に成功した、菌の感染に伴い発現変化するmiRNA(miR-X)が、どのような機構で制御されているのか精査したところ、HIF-1αという低酸素ストレス応答性転写因子が重要であることが判明した。HIF-1αは、菌の感染依存的にmiR-Xのプロモーター領域に直接作用し、5倍以上の転写活性化を惹起することが分かった。miR-Xの機能を明らかにするために、標的遺伝子の探索を行った。バイオインフォマティクスとマイクロアレイから得られた遺伝子情報を駆使し、標的遺伝子をいくつかの候補に絞り、その後のレポーターアッセイにより生体内で標的となっている遺伝子を同定した。同定された標的であるMNTやFGFRL1といった遺伝子は、細胞増殖に関与する遺伝子であったため、miR-Xが宿主細胞の細胞増殖に及ぼす影響を調べた。上皮細胞にmiR-Xを強制発現させ、MTTアッセイにより細胞の増殖速度を観察したところ、miR-Xが細胞増殖抑制能をもつことが分かった。次に、miR-Xによるサイトカインの産生に及ぼす影響を観察したところ、IL-8といった細菌感染で重要な炎症マーカーの発現を誘導することが判明した。これらの結果から、菌感染による一連のストレスに対応するために、miR-Xが細胞周期を止め、サイトカイン産生を促進するという役を担っていることが明らかになった。
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