2009 Fiscal Year Annual Research Report
多剤耐性緑膿菌の発生進展メカニズムの解明と検査診断、感染制御への応用
Project/Area Number |
20659092
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
浅井 さとみ Tokai University, 医学部, 講師 (60365989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮地 勇人 東海大学, 医学部, 教授 (20174196)
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Keywords | 耐性緑膿菌 / メタロベータラクタマー / 耐性遺伝子 / Mex pump / アミノグルコシド / 院内感染 |
Research Abstract |
重症熱傷患者において多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonas : MDRP)の出現は、患者治療のみならず院内感染対策上大きな問題である。特に、アミノグルコシド(AGs)耐性は治療経過中多段階の過程を経て生じ、その際薬剤排出ポンプ(Mex pump : MexAB-OprN、MexEF、MexXY)の出現が注目されている。H20年9月からH21年12月までに当院入院患者創部から分離された緑膿菌臨床菌株37株(MDRP25株、2剤耐性株12株)を用い、既知の耐性遺伝子(メタロβラクタマーゼ:MBL、oprD欠損など)、薬剤排出ポンプの発現の有無と薬剤感受性の関係を調べた。MDRPは、イミペネム(IPM)とシプロフロキサシン(CPFX)、アミカシン(AMK)への感受性により確認した。菌の相同性はrep-PCR法を用いて解析した。oprD欠損はPCR法、薬剤排出ポンプ(mexAB、mexCD、mexEF、mexXY)の発現はRT-PCR法、薬剤排出ポンプの発現量はウエスタンブロット法を用いて確認した。MBL産生は、2-メルカプトプロピオン酸(2-MPA)使用のdisk拡散法でスクリーニング後、PCR法で遺伝子型をみた。 MDRP株全株でMBLのVIM1型獲得と、MexAB-OprN、MexEF、MexXY3ポンプの発現が認められ、oprD欠損とmexCDの発現は全ての株で認められなかった。通常の臨床経過では、まずMBLを獲得、MexAB-OprN、MexEFの発現によりIPMとCPFX、AGs系薬のうちのゲンタマイシン(GM)が耐性となった。その後MexEFの発現が増加してトブラマイシン(TOB)にも耐性となり、最終的にAMKにも耐性のMDRPになった。MBL獲得後すぐにGMとAMK耐性になるもTOBは感受性のままで、後にTOB耐性を獲得した株が見られた。この場合、当初から3ポンプの発現がみられTOB耐性にはMexEFの発現増加に関連がみられた。また、熱傷創部から連続して採取した検体にて、感受性緑膿菌がMBLを獲得した後最終的にAMKに耐性となる過程で、Mexポンプの発現様式に変化がみられた。 MexEFの発現上昇はTOB耐性化への関与が、また、AMK耐性株でのみ認められたMexXYの発現は、AGs系薬剤高度耐性化への関与が示唆された。臨床菌株において、MexXY発現の経時的なモニタリングはMDRP進展の経過を知る上で重要であると考えられた。
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