Research Abstract |
1.糖尿病マウスの確立 マウスにストレプトゾトシン200mg/kgを腹腔内投与し,経時的に血清グルコース濃度を測定した.ストレプトゾトシン投与後7日目の血清グルコース濃度が300mg/dL以上のマウスを糖尿病マウスとして用いることとした.また,コントロールとして,溶媒(クエン酸バッファー)のみを投与したマウスを同時に作製した. 2.糖尿病マウスを用いた皮膚損傷モデルの作製 糖尿病マウスならびにコントロールマウスに,ペントバルビタール腹腔内投与で麻酔し,各マウスの背部にバイオプシーパンチを用いて直径4mmの打ち抜き損傷を作製した. 3.肉眼的観察 損傷作製後,1,3,6,10,14日目に皮膚損傷部をデジタルカメラで撮影し,損傷部面積の閉鎖率を比較したところ,糖尿病マウス群ではコントロール群と比べて有意に治癒が遅延していることが判明した. 4.コラーゲン産生量測定 損傷作製後,経時的に皮膚損傷部を採取し試料とし,皮膚コラーゲンの主要構成成分であるハイドロキシプロリン含有量を測定した.糖尿病マウス群ではコントロール群と比べて,ハイドロキシプロリン含有量が有意に減少していた.したがって,糖尿病マウスでは損傷部へのコラーゲン蓄積の減弱を伴って,治癒が遅延していることが判明した. 5.形態学的観察 損傷作製後経時的に採取した損傷部組織を用いて,パラフィン包埋切片を作製し,HE染色を行った,受傷後6日目以降において,コントロール群で認められた著明な肉芽組織形成が,糖尿病マウス群では減弱していた.さらに,免疫組織化学的に損傷部への白血球(Ly-6G陽性好中球およびF4/80陽性マクロファージ)浸潤の程度を検討したところ,糖尿病マウス群では白血球浸潤の減少が認められた.したがって,糖尿病マウスでは損傷部への白血球浸潤の減少を伴って,治癒が遅延していることが示唆された.
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