Research Abstract |
1. 糖尿病マウスを用いた皮膚損傷モデルの作製:平成20年度において確立したストレプトゾトシン誘発糖尿病マウス,ならびにコントロールマウスの背部にバイオプシーパンチを用いて直径4mmの打ち抜き損傷を作製した. 2. 肉眼的観察:損傷作製後,経時的に損傷部面積の閉鎖率を比較したところ,糖尿病マウス群ではコントロール群と比べて有意に治癒が遅延していることが判明した. 3. 形態学的観察:損傷作製後経時的に採取した損傷部組織を用いて,パラフィン包埋切片を作製し,免疫組織化学的に損傷部への白血球浸潤の程度を検討した.糖尿病マウス群では好中球およびマクロファージ浸潤の減少が認められた. 4. 種々の分子の遺伝子およびタンパク質発現の検討:採取した皮膚試料を用いてRT-PCR法により種々の炎症性サイトカインの遺伝子発現を検討したところ,主に単球/マクロファージに対する走化能を有するケモカインMCP-1の発現が,糖尿病マウス群で減少していた.さらに,MCP-1の局在を免疫染色により検討したところ,マクロファージならびに線維芽細胞であることが判明した.また,MCP-1のレセプターであるCCR2のタンパク発現を,マクロファージ,線維芽細胞,血管内皮細胞に認めた. 5. リコンビナント投与実験:損傷を作製した糖尿病マウスに,リコンビナントMCP-1 100ng を3回(dayO,2,4)損傷部局所に投与し,治癒を肉眼的に観察したところ,治癒遅延が回復していた.したがって,MCP-1/CCR2シグナルが皮膚創傷治癒に促進的に作用することが判明した. 6. その他のサイトカイン発現の検討:野生型マウスの損傷部において,CCR5, oncostatin M receptor β (OSMRβ)の遺伝子発現およびタンパク発現の亢進を認めた.そこで,CCR5遺伝子欠損ならびにOSMRR遺伝子欠損マウスに皮膚損傷を作製したところ,いずれの遺伝子欠損マウスでも野生型マウスと比べて治癒が遅延することを見いだした.したがって,CCR5およびOSMRβを介したシグナルが,皮膚創傷治癒過程に重要な役割を担っていることが示唆された.
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