2009 Fiscal Year Annual Research Report
育児期の母親の拘束ストレスが母子双方に及ぼす影響の解析
Project/Area Number |
20659112
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西村 甲 Keio University, 医学部, 講師 (20218192)
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Keywords | 東洋医学 / 育児期ストレス |
Research Abstract |
注意欠陥多動性障害などの異常行動は、周産期ストレスを起因としたストレス脆弱性亢進が関連する可能性がある。我々は、母仔分離ストレスの実験を通して、仔自身が直接受けるストレスのみでなく、ストレスを受けた母親による仔への間接的影響も考慮する必要があると考え、産後の母親に拘束ストレスを負荷し、仔への影響を検討した。平成20年度の検討から、母親が拘束ストレスを負荷された仔(RS群)では離乳時に低体重が観察され、低体重は持続した。仔の成長障害の原因として低栄養は否定的であった。RS群では、仔のIGF-1の減少、下垂体におけるGHの減少、視床下部におけるGHRHに変化がないことから、母親への拘束ストレス負荷は、仔のGHRHシグナル伝達からGH産生までの過程に影響を及ぼし、IGF-1産生低下と成長障害を起こす可能性が示唆された。本年度には、下垂体における下垂体前葉ホルモンの転写因子について検討した。TSH、PRL、GHの調節に関与するpit-1発現量が低下し、また、その上流にあるprop-1発現量が不変であり、prop-1からpit-1への調節を行うpitx2a/b,pitx2c発現量が低下していた。これより、仔の脳下垂体におけるGHの低下は、pitx2a/b,pitx2cの低下に基づく可能性が示唆された。次に、成長障害をきたした仔に対して、GH補充療法、漢方薬による治療を行った。両者ともに有効性が確認されなかった。ただし、現行のストレス負荷が非常に強いため、強度の低い負荷に対する治療効果について検討が必要と思われる。 本研究より、母マウスに対する拘束ストレス負荷が、下垂体のGH産生低下による仔の成長障害を起こすことが明らかとなった。乳児期の子の成長において、母親の受けるストレスを十分に考慮する必要性を強く示唆するとともに、治療の開発が望まれるところである。
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