2008 Fiscal Year Annual Research Report
聴神経の機能再生:聴神経前駆細胞の聴神経内移植の試み
Project/Area Number |
20659264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 壽一 Kyoto University, 医学研究科, 教授 (90176339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 憲 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (60378685)
吉川 弥生 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00452350)
神田 智子 京都大学, 医学研究科, 医員 (20378681)
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Keywords | 再生医学 / 聴覚 / 聴神経 / 細胞移植 / 前駆細胞 |
Research Abstract |
当該平成20年度は、前年度に引き続いてマウス胎児耳胞由来の聴神経前駆細胞を正常聴神経に移植することによって、移植細胞がどのような生物学的動態を示すかについて継続的に実験研究を実施した(なお前年度までの成果は、Sekiya T et al., Eur J Neurosci. 25:2307-18,2007などにおいて発表しているが、その主たる内容は、前駆細胞は移植先の聴神経内で分化してwild typeの聴神経同様のbipolarな形態を取るようになることなどが確認できたことであった。なお、詳細は下記Webページに掲載してある)。この成果を受けて、平成20年度には、移植対象を正常聴神経ではなく変性聴神経へと発展的に変更してきている。臨床で経験される難聴の多くにおいては、聴神経に何らかの神経変性が生じているとみなしうることから、移植対象として変性聴神経を設定したことは研究方向として合理的展開である。そしてこのことは、我々の研究がよりtranslationalな側面を有するようになったことを意味している。さらに、聴神経前駆細胞以外の細胞の移植生着分化の可能性も同時に検討を始めたが、これらの研究において経験されている主たる困難は、大脳や脊髄損傷における神経突起伸長実験において経験されてきたものと類するものであることも次第に明らかになりつつある。我々の研究は、このような中枢神経再生において特徴的な神経機能再生阻害因子について、聴神経を対象として検討を深めているという点においてきわめて特異的である。なお、上記のような研究過程において、我々の聴神経変性実験モデルは、ヒトにおける"auditory neuropathy"の病態を再現しうるラット実験モデルであることが判明したので、これに関する論文も公表した。以上ようなことから、我々は本研究費補助を受けて、多くの新知見を獲得しつつ研究課題遂行を確実に実施できていると言える。
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