2008 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病菌が誘発する動脈硬化病変形成の分子基盤研究のパラダイムシフト
Project/Area Number |
20659284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
天野 敦雄 Osaka University, 大学院・歯学研究科, 教授 (50193024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 伸治 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (40362678)
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Keywords | 歯学 / 動脈硬化 / 感染症 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 歯周病菌 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に沿った進捗が得られ良好な成果を残せた。 アテローム性動脈硬化の発生病理に脂質(コレステロール)必須説の他に、慢性内皮損傷説が提唱され、今では専門家の強い支持を受けている。この説は、様々な要因による血管内皮損傷が、内皮喪失、血小板の内皮下層への接着、血小板凝集、血小板由来増殖因子、単球由来増殖因子の遊離などの一連の現象を引き起こし、その結果、血管平滑筋細胞が中膜から内膜へ遊走し、さらに分裂増殖し血管内腔を狭くするという説である。この慢性内皮損傷説に対応する「血管内皮傷害マウスモデル」という新しい実験系を世界に先駆けて用い、P.gingivalisのアテローム形成への直接的関与を示すデータを得た。一過性にマウス鎖骨下静脈に投与されたP.gingivalisは、血管平滑筋細胞を収縮型から増殖型へと変化させる(血管内径を保つため、通常の血管平滑筋細胞は恒常的に収縮型である事が必要であり、決して細胞増殖はしない、にもかかわらずである。)。そのため、血管壁平滑筋は増殖し、ついには血管内壁を満たし、粥腫(アテローム)を含まない明確な動脈硬化病変を形成した(論文投稿中)。この現象は培養心筋細胞においても示された(FEBS Lett,2009)。 更に100名の動脈硬化患者から手術時に摘出した動脈硬化病変組織の組織学的観察を行ったところ、P.gingivalisが検出されない(P.gingivalis陰性)組織には、粥状物質が貯まったアテロームが著明に観察されたが、興味深いことにP.gingivalis陽性組織にはアテロームはほとんど観察されず、代わりにS100calcium-binding proteinの蓄積が顕著であった(Circulation投稿中)。この知見は心・血管疾患発症とP.gingivalis感染を結ぶ未知の分子基盤の存在を明確に示している。
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Research Products
(26 results)