Research Abstract |
適切な濃度下で骨芽細胞を活性化させることが知られているフッ素を徐放させるリン酸オクタカルシウム(OCP)デバイスの開発を行った.フッ素(F)はごく低濃度でも,OCPと共存すると,生理的pH下ではOCPが加水分解し,HA形成(F含有HA(FHA)形成)を促進する因子としても知られている.Fの存在下において,OCPのHAへの加水分解をできるだけ抑制しつつOCPにFを含有させるために,OCP表面でのF吸着を促進した後(F-OCP形成(このような物質の存在を仮定)を促進させた後),F-OCP上にOCPを多段的に形成させるという設計指針に沿ってデバイスを作製した.これを実現するために,OCP結晶相が均一に析出してくる条件下(Caおよびリン酸を含みpHを一定値に維持した系)に,あらかじめFを共存させておき,OCPを合成させると,反応の前期にF-OCPが析出し,含有Fが全量消費された後,F-OCPがテンプレート(結晶成長の核)となり,その表面上でFを含有しない純OCPが析出することを期待した.化学分析およびX線回折によると,Fが1.38wt%までのF含有プロダクトは,OCPの結晶構造,およびOCPに近い溶解度を示したことから,合成時のFの初期濃度を適切に設定すれば,生体内でOCPの溶解とともに,Fを徐放させることが期待できるF徐放デバイスの作製が可能となった(Shiwaku, Anada, Suzuki et al., J Ceram Scoc Jpn 2010 in press).次年度にF-OCPの骨欠損における骨再生の検討,および同様の指針にてZn徐放デバイスを開発する予定である.
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