2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20670003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白根 道子 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (90398082)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 神経疾患 / Protrudin / FKBP38 |
Research Abstract |
本研究では、神経発生、神経機能調節における小胞輸送システムの関与およびその分子機構を明らかにすることを目的としている。特に神経細胞の分化、移動、構築、機能制御に焦点を当て、膜シャペロンタンバク質FKBP38と膜輸送制御タンパク質protrudinの複合体、即ち"FKBP38-protrudin複合体"による制御機構を解明している。そして、それらの機構のヒトの二分脊椎などの神経形成不全や遺伝性痙性対麻痺などの神経疾患の病因への関与を解明し、さらに治療への応用を目指した。本年度の具体的な実績内容は以下である。(1)Protrudin結合脂質PtdIns5Pの同定。Protrudinはボスファチジルイノシトール(PIP)結合モチーフのFYVEドメインを有している。そのリコンビナントタンパク質を作製し、PIPとの結合実験を以下の3種類の方法で行った。PIPをスポットした膜(PIP-Strips)を用いた結合実験、PIPを含むリボソームとの結合実験、PIP固相化プレートへの結合実験である。その結果、protrudinのFYVEドメインはPtdIns5Pと結合することを見いだした。(2)Protrudin KO作製と、神経軸索および樹状突起スパインにおける異常。ProtrudinのKOマウスを作製したところ、軸索輸送不全が示唆され、ポストシナプスにおいても樹状突起スパインの成熟不全が認められた。よってprotrudinはスパイン内輸送制御機構にも関与していることが示唆された。また電気生理学的解析により、KOで海馬神経のポストシナプスの過興奮が認められた。マウス海馬初代培養細胞で、Phos-tag-PAGEおよび質量分析計により、protrudinが神経活動依存的にリン酸化亢進されること、またPKAやPKCの関与を見いだした。そしてprotrudinのPtdIns5Pとの結合は、これらキナーゼの活性化により抑制されたため、神経活動依存的なシグナルの下流でprotrlldinとPtdIns5Pの作用が制御されていることが示唆された。(3)神経細胞内protrudin結合タンパク質TMEM55の発見。神経細胞においてprotrudin複合体を精製し、質量分析計により結合タンパク質の網羅的解析を行った。神経細胞内の生理的な複合体を同定するための工夫として、内在性量に近い低発現となるようにレンチウイルスにて遺伝子導入し、また高感度の質量分析計Orbitrap Velos Proを使用した。その結果、PtdIns5P生合成酵素であるTMEM55が高頻度で再現性良く同定され、protrudin、PtdIns5P、TMEM55の相互作用が示された。
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Research Products
(4 results)