2010 Fiscal Year Annual Research Report
レンチウイルスベクターを用いた新しい遺伝子機能解析システムの構築とその応用
Project/Area Number |
20670006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊川 正人 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (20304066)
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Keywords | レンチウイルス / ジーントラップ / バイオリソース / 生殖 / 実験動物 |
Research Abstract |
レンチウイルスベクターはHuman Immunodeficiency Virus(HIV)由来のレトロウイルスベクターの1種であるが、特筆すべき利点として、非分裂期にある細胞にも効率良く感染できる特徴や、遺伝子発現が抑制されにくい特徴を併せ持つ。本研究では、動物個体レベルで遺伝子機能を解析するツールとして、レンチウイルスベクターの有用性について検討することを目的としている。 22年度はLVベクターを生殖系列に寄与できるEmbryonic Stem(ES)やGerm line Stem(GS)細胞、もしくは受精卵に感染させることで、遺伝子破壊したマウスを効率良く作製する研究を継続して実施した。これまでにES細胞では薬剤選択によりLVベクター挿入株を1000近く樹立し、内292株について、Ligation Mediated PCR法(LAM-PCR法)によりベクター挿入位置を同定した。また受精卵への感染ではGFP蛍光選別によりLVベクターが挿入されたマウスを200系統近く作製した。内82系統について挿入位置を同定するとともに、57系統を公的バイオリソースセンターに寄託・公開し、譲渡可能とした。次にインテグレース欠損型のLVベクターを用いて遺伝子置換システムの開発を目指した。ES細胞での実験では、標的遺伝子組み換えに成功したものの、絶対的な相同組み換え率の改善は認められなかった。 ところで我々は、LVベクターを胚盤胞に感染させることで胎盤特異的な遺伝子操作が可能であることを報告している。本研究では、この技術を応用して、血管新生阻害因子である可溶型のVEGF受容体(sFLT1)を胎盤特異的に発現させることを試みた。その結果、妊娠マウスの血圧が上昇すると共にタンパク尿を発症し、妊娠高血圧症候群のモデルとなることを見出した。さらにこのモデルマウスを用いてsFLT1が胎盤の血管新生不全や子宮内胎児発育不全を引き起こすことを明らかにすると共に、プラバスタチンによるPlacental Growth Factor(PGF)の誘導が治療効果を示すことを論文報告した。この発表論文は多数の新聞でも紹介されるなど研究成果の情報発信と社会還元に繋がった。
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Research Products
(5 results)