2008 Fiscal Year Annual Research Report
ユダヤ教の人間観-マイノリティに関するテキストのデータベース化と現代社会への提言
Project/Area Number |
20672001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝又 直也 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (10378820)
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Keywords | ユダヤ学 / ユダヤ教 / マイノリティ / 中東 / 比較宗教学 / ヘブライ語 / ヘブライ文学 / 宗教史学 |
Research Abstract |
平成20年度においては、「ユダヤ教のなかのマイノリティに関する総合的研究-理論的側面」として、ユダヤ教文献にあらわれる「マイノリティ」たちに関する言説をデータベース化する作業を開始した。具体的には、データベースのコアとなるヘブライ語聖書からデータの収集を始めた。創世記から始めて各書のヘブライ語聖書原典、邦訳、英語訳を比較対照しながら、マイノリティや被差別者に該当する用語を含む節全文、そこに含まれる用語のヘブライ語見出し語、邦訳見出し語、英訳見出し語を拾っていった。本年度内に、ヘブライ語聖書、ミシュナ、タルムードの一部のデータはほぼ収集できた。しかし、これらの作業と同時に、何をもってマイノリティ/マジョリティ、差別者/被差別者の線引きをするかということが、絶えず問題点として指摘された。そこで、社会学、人類学、宗教学等での同種の問題を扱う際の議論を踏まえながら、これらを分ける視点にすでに差別者の視点が入ること、被差別者の中に差別構造もありうることなどから、明白に差別的なマイノリティ用語だけではなく、広くユダヤ教の人間分類に働く視点として捉える必要があることが認識された。結果、ヘブライ語聖書のデータ収集においても、「民」「国民」「○○人」といった必ずしもマイノリティではない用語も広く含めて、収集している。これらのデータから、従来、「民」「民族」のような、必ずしも差別的ニュアンスは含まれないとされた用語も、文脈において使い分けられているのではないかということが推察された。同時に、そのような文脈を無視した、特に邦訳聖書での、訳語、訳文の一貫性の欠如も問題となった。テクニカル面では、データベースの具体的な仕様、画面のデザインの方向性が定まってきた。本年度のデータ入力は表計算ソフトに基づいたが、データベースシステムが定まれば、その編集機能から直接データ入力を行うことが可能になる。
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