2010 Fiscal Year Annual Research Report
大規模数値計算による初期宇宙構造の形成、進化およびその大域的分布の理論的研究
Project/Area Number |
20674003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (90377961)
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Keywords | 理論天文学 / 星形成 / 初期宇宙 |
Research Abstract |
炭素や酸素などの軽金属原子を微量に含む星間ガスの熱化学進化を追う計算コードを開発し、低金属量星形成の宇宙論的シミュレーションを行った。金属量が太陽の10万分の1以上あれば、ガス雲収縮段階で(宇宙塵による冷却が働き、熱不安定性が引き起こされることを確かめた。これまでに行った、金属を全く含まない場合のガスの熱進化との違いを明らかにし、初代銀河形成シミュレーションへの道筋をつけた。ブラックホール周りの降着流の数値計算を行い、降着流が一般に力学的に不安定になること、また、中心ブラックホールの角運動量が大きい場合には重力駆動によるアウトフローが生じることを示した。今後ブラックホールからの輻射フィードバックを取り込むことで、宇宙早期の超巨大ブラックホール形成のシミュレーションを行うことができる。これらの結果を日本、ドイツ、米国において開催された国際学会にて招待講演として発表した。また、2010年3月に長崎大学において、また2011年1月に愛媛大学において初代星・初代天体研究会を開催し、低金属量星の形成に関する講演を行った。 年度後半には、早期銀河形成の宇宙論的シミュレーションを行い、ライマン輝線銀河とよばれる星形成銀河の空間分布、光度関数など統計的諸性質の研究をおこなった。最近得られた観測結果と詳細に比較し、銀河からの紫外光脱出確率の計算に、銀河中ガスの多相構造を取り入れた場合のみ観測結果と整合するモデルを構築できると結論づけた。今後、同理論モデルを低赤方偏移の銀河に適用し、将来の観測と比較することができる。
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