2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模数値計算による初期宇宙構造の形成、進化およびその大域的分布の理論的研究
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20674003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (90377961)
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Keywords | 理論天文学 / 星形成 / 初期宇宙 |
Research Abstract |
昨年度に遂行した早期銀河形成の宇宙論的シミュレーションを用い、ライマンアルファ輝線銀河とよばれる星形成銀河の空間分布、光度関数など統計的諸性質を明らかにした。最近得られた宇宙年齢20億年の頃に存在した銀河の観測結果と詳細に比較し、銀河からの紫外光脱出確率の新しいモデルを提案した。さらに、同シミュレーションを用いてサブミリ波銀河のモデルを構築した。この理論モデルにより、星形成銀河のエネルギー放出率を紫外域から赤外・電波域に至るまで整合的に計算できるようになった。現在は電波域での観測の可能性を追求している。 宇宙論的シミュレーションの初期条件生成の手法を再検討する研究を行った。今年度は、宇宙初期での暗黒物質とバリオン物質の速度の違いが構造形成に与える影響を詳細にしらべ、研究論文として発表した。今後、より精度の高い初期条件生成法を開発するために結果を反映させたい。 2011年4月にはドイツ マックスプランク研究所およびハイデルベルグ大学でセミナー講演し、初代星形成について研究発表した。また6月にはドイツにおいて開催された国際研究集会にて招待講演として初代星、銀河および超新星に関する研究を発表した。10月にフランスで開催された国際会議にて銀河形成シミュレーションの結果を発表し、また、2011年2月には米国で行われた国際研究集会にて遠方超新星について発表した。2011年12月には九州大学において初代星・初代天体研究会を開催し、本研究代表者は原始星進化と遠方超新星に関する講演を行った。 2011年8月に、ドイツより若手の協同研究者一名を招き、数値計算手法についての研究打ち合わせを行った。また、数物連携宇宙研究機構でセミナー講演をしていただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初代星形成に関する研究では輻射フィードバックを取り入れた計算結果も得られ、その典型的質量を予言するなど、当初の予定以上に進展があった。同時に、遠方超新星やガンマ線バースト探索に関する研究も開始し、深宇宙観測の新たな手法を提案することができた。一方で、低金属量星形成については計算コード整備は終了したものの、今年度は具体的な成果にまではいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたるため、(1)初代星形成シミュレーションを多くのサンプルについて行うこと、(2)早期銀河の大域的分布と光度関数を理論的に明らかにすること、(3)遠方超新星の光度曲線モデルを構築し、大規模サーベイによる検出方法を検討すること、の3項目について重点的に研究をすすめたい。上記(1)には、低金属量かつ低質量星の形成の研究も含まれる。研究計画に大きな変更はないが、稼働を開始した観測装置あるいは次世代の観測装置(ALMA,TMT,すばる望遠鏡新型カメラ)の性能などがかたまりつつあるので、より具体的な観測提案を念頭においた理論研究をすすめる。
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