2012 Fiscal Year Annual Research Report
大規模数値計算による初期宇宙構造の形成、進化およびその大域的分布の理論的研究
Project/Area Number |
20674003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90377961)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 宇宙物理 |
Research Abstract |
本年度は、将来の観測計画に対する具体的理論予言を与えるための計算を遂行し、以下の3つのテーマに関連する研究をすすめた。 1)様々な暗黒物質モデルにおける構造形成:暗黒物質が初期宇宙で分散を持つ場合に銀河サイズ程度の長さスケールで物質分布が滑らかになることを明らかにした。また、暗黒物質が超対称性粒子から成り、対消滅をおこす際に発生するガンマ線やX線が宇宙初期の銀河間ガスに及ばす影響を調べた。そのために必要な、高エネルギー粒子伝搬シミューレションコードMEDEA2を開発した。 2)III.2型初代星形成および微量な重元素やダストを含むガスからの星形成:早期天体からの輻射の影響を受けたガス雲に生まれる原始星の進化の計算を行い、主系列にいたる際の典型的質量が太陽の10-20倍程度であることを示した。また、微量の重元素(炭素、酸素、鉄など)を含むガスが収縮する際にはガス雲中心が高密度に達したときにダストの熱放射による熱不安定性が誘起され、ガス雲が分裂することを示した。遠方ダスト銀河の形成シミュレーションを行い、ALMA電波望遠鏡を用いた観測で赤方偏移5以上の銀河を検出できることを示した。 3)遠方超新星の観測可能性:最近発見された、極めて明るい超新星の光度曲線理論モデルを構築した。特に、超新星2006gyについて詳細なモデル比較をし、星周ガスと爆発衝撃波との相互作用をもとにしたモデルで説明できることを示した。さらに、将来のすばる広視野可視光サーベイにより極めて明るい超新星がどのくらいの数検出できるか計算した。ここでは上記の光度曲線をもとにした多数のモンテカルロ計算を行った。 総括すると、前年度までの理論研究をもとに、本格稼働を開始したALMAやすばる望遠鏡を用いた観測により深宇宙を探索する方法を提唱し、ここに五年の研究計画は当初の目標を達成して終了した。
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