2010 Fiscal Year Annual Research Report
多次元的相転移物質における次世代光スピン科学現象の創成
Project/Area Number |
20675001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大越 慎一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10280801)
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Keywords | 相転移 / スピン化学 / 磁性 / 誘電性 / 光物性 / ナノ微粒子 / 強磁性体 / 非線形光学 |
Research Abstract |
H22年度において、Co^<II>イオンと[Nb^<IV>(CN)_8]^<4->を組み合わせることにより、湿度に対して敏感に配位環境が変化するオクタシアノ金属錯体磁性体Co_2[Nb(CN)_8]・zH_2Oを合成することに成功した。この物質は、強磁性(高湿度)⇔反強磁性(低湿度)という磁気スイッチングを示した。磁気特性を測定すると、湿度100%の状態ではキュリー温度12K、保磁力300 Oeの強磁体であったが、湿度の低下に伴って磁化が徐々に減少し、湿度10%ではネール温度5Kの反強磁性体となった。湿度を変化させて試料の重量変化を測定したところ、湿度100%の状態では組成当たり水分子が8個存在したのに対し、湿度15%の状態では存在する水分子の数は5.8個まで減少した。なお、この湿度変化に伴う重量変化は可逆的に観測された。紫外可視近赤外スペクトルでは、湿度100%の状態では6配位Co^<II>に由来する吸収が観測され、湿度を下げても吸収スペクトルは変化しなかった。以上のことから本物質においては、湿度に依存した結晶水の脱着に伴って、水素結合のネットワークが切断あるいは形成されることによって、Co^<II>(S=3/2)とNb^<IV>(S=1/2)間の超交換相互作用(J)の符号が変化することにより、強磁性と反強磁性のスイッチングが起こったと考えられる。本錯体は、湿度応答型のオクタシアノ錯体として初めての例である。
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Research Products
(52 results)