Research Abstract |
前年度までに得られた成果を基に,まず,熱酸化膜付きSiウエハ上に微結晶Siを成膜したボトムゲートTFTを試作した。しかし,複数回試作したが,電界効果移動度は0,3cm&2/Vs程度の値(一般的なアモルファスSi TFTと同程度)しか得られなかった。同様の条件において形成した微結晶Siを発電層とした薄膜Si太陽電池についても,変換効率は1%に満たなかった。このような結果しか得られなかった原因としては,以下の2点が考えられる。まず,現在使用している多孔質カーボン電極が,結晶相とアモルファス相が混在した微結晶Siの低温成膜には適さないことである。詳細な流体解析の結果,電極特性上,プラズマ中ガス滞在時間が長い上に制御できないため,成長膜が極めて結晶化しやすくなる。この結果,結晶粒間の空隙が多い(緻密性が低い)膜構造となり,高い電気特性が得られていなかったと考えられる。もう一つの原因は,膜中不純物である。プロセス雰囲気および膜中不純物濃度分布の詳細な検討の結果,電極システムの構造上,内部に吸着した水分等の不純物を十分にクリーニングできないことが判明した。また,膜の緻密性が低いことから,成膜後の大気暴露による膜の酸化も顕著に観察された。これらの結果から,多孔質カーボン電極は,良好なデバイス特性に必要な,緻密かつ高純度(不純物濃度10^<19>cm^<-3>以下)の微結晶Si成膜に適さないとの結論に達した。 以上の結果を受け,多孔質カーボン電極に代わる新たな電極システム(平行流路を用いた吸引型電極)の開発に着手した。試作電極による実験により,完全パーティクルフリー,かつアモルファス/微結晶の構造制御をフレキシブルに実現できる見通しが得られた。 絶縁膜に関しては,本年度は,特にSiO_2の成膜に関し,原料ガスを従来のSiH_4/CO_2からHMDSO/O_2に変更した。これは,過剰な投入電力によるダスト発生を抑止するためである。また,水素の混合を併用することにより,常温(基板加熱無し)でパーティクルフリーなSiO_2の高速形成を達成した。
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