Research Abstract |
新たに開発した新型電極システム(吸引型平行平板電極)を用い,アモルファスSi(α-Si)および微結晶シリコン(μc-Si)の低温・高速成膜条件の検討を行った.種々の条件(基板温度は220℃一定)でSiを成膜し,成膜嶺域(長さ20mm,幅80mm)における結晶性を評価したところ,アモルファスから結晶への膜の相転移は,1ms以下の短いガス滞在時間で生じることが明らかとなった。また,投入電力が大きい程,原料SiH_4のH_2による希釈割合(H_2/SiH_4比)が大きい程,相転移が早く生じることも確認された.さらに,プラズマ条件に関わらず,成膜領域の内外にダストの付着は一切認められなかった.これらのことから,開発した新型電極システムにより,完全パーティクルフリー,かつアモルファス/微結晶のフレキシブルな膜構造制御を実現できたと考える. 次に,高速形成(成膜速度15~20nmls)したα-Siをチャネル層としたTFTの試作と評価を行った。TFTの試作においては,熱酸化膜付きSiウエハを基板として用い(Siの熱酸化膜をゲート絶縁膜として利用),チャネルSi成膜時の投入電力をパラメータとした.その結果,試作した全てのTFTが正常に動作することが確認された。また,電界効果移動度は,チャネルSi層成膜時の投入電力が大きい程高くなり,最大で2cm^2/Vsが得られた.この値は,一般的なα-SiTFTと同程度,あるいはそれ以上のものである.今後は,μc-SiについてもTFT試作検討を進める. 一方,si成膜と同様の電極システムを用い,原料ガスとしてHMDSO/O_2を使用したSiO_2の成膜検討を行った.その結果,常温で完全パーティクルフリーなSiO_2形成を達成するとともに,プラスチック(ポリカーボネート)基板上への成膜も実証した.また,MOS構造による電流-電圧特性の評価から良好な絶縁性が確認された.今後,TFTのゲート絶縁膜として用いることを念頭に,さらなる絶縁性および成膜速度向上に向けた成膜条件の検討を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで用いていた多孔質カーボン電極に代わる新型電極の開発により,パーティクルフリーはもちろんのこと,最大20nm/sの成膜速度で不純物濃度10^<19>cm^<-3>以下のSi成膜を達成した,また,本研究により高速形成したα-Si薄膜をチャネル層としたα-Si TFTの試作の結果,一般的なα-Si TFTと同等の特性が得られることを実証した.一方,SiO_2薄膜については,目的としていたプラスチンク基板上への成膜を実証した.また,MOS構造による電流一電圧特性の評価から良好な絶縁性も確認された.
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度(最終年度)には,将来の大面積基板上への連続成膜を想定し,基板を走査することによって100×80mm^2の面積に一様な膜厚(膜厚誤差±5%以下)のSi成膜を実証する.また,前年度の成果を基に,4-Si薄膜だけでなくμc-Si薄膜によるTFT作製を進める.基板としてはSiウエハに加え,ガラス基板やプラスチックフィルムも使用する.一方,SiO_2薄膜については,成膜速度および絶縁性をさらに向上させ,TFTのゲート絶縁膜として実際のTFT試作において用いる.最終的には,大気圧プラズマにより形成したSiおよびSiO_2を用いたプラスチックフィルム上へのTFTの実証を目指す.
|